ここは終わってしまった世界。 少なくとも愚かな最終戦争で破滅した人類と、そのとばっちりを受けた生き物達にとっては終わってしまった世界と言っていいだろう。 と言っても全てが無くなったわけではない。 その最終戦争が残した傷痕は残っている。 鉛色の空、荒れ果てた大地、汚染された海。 そんな終わってしまった世界の荒野を歩く人影があった。 「ねぇねぇねぇ、きょうもいっぱい歩くの? 歩くの?」 そんな無邪気な声を上げたのは11歳くらいの少女だった。 だが異常なことに、彼女には手足が無い。 代わりに【しっぽ】があるかのように背中の肉が伸びていて、 【うろこ】のある全身がぬるぬるとした粘液に包まれ、舌からは涎とも粘液ともつかない液体がこぼれている。 全体的になめくじのような印象だ。 「そりゃそうよ。立ち止まってもしょうがないんだから」 気の無い返事を返したのは、こちらもまた少女だった。 頭にカチューシャをつけた15歳くらいの、一見普通の女の子だ。 腕に無骨な【ガントレット】をつけている以外は、であるが。 「ハッ! アンタは歩くってより這い回るだけどね」 微妙に嫌そうな顔をしながら3人目の少女が言う。 年齢はこちらも15歳くらいだろう。 彼女の体は1人目ほど異形でも無いが2人目ほど普通でもない。 顔には両眼に加え【よぶんなめ】があり、背中からは赤い【にくむち】が伸びている。 服が所々赤黒く、素肌にも乾いた血がはりついて【ちみどろ】になっていた。 「まってよぅ。 はやいよう」 なめくじのような少女は、這いずりながら二人を交互に見上げる。 確かに、歩いているとは言い難い姿だ。 「喧嘩はやめなさいよもう」 【ガントレット】をつけた少女があきれたようにたしなめつつ、溜息を吐いた。 【ガントレット】をつけた少女が『くりいと人形』 【にくむち】を生やした少女が『くしざしローズ』 なめくじのような少女が『ぬとぬとバーミン』 3人は互いのことをそう呼んでいた。 本当の名前は存在するのかすらわからない。 彼女達は、人間では無い。 最終戦争で発明された科学技術達……ナノマシン技術、生体コンピューター、遺伝子操作、 そしてそれらの集大成としてのネクロマンシー技術で動く、アンデッド。 動く死体ですらない。そう見えるだけの特殊な粘菌と機械の塊である。 だがその心は人間だ。少なくとも3人はそう信じていた。 3人はとある廃病院で一緒に目覚め、この寄る辺の無い世界で、互いの存在に縋りつくように姉妹となった。 目覚めたからには目覚めさせた存在、すなわちネクロマンサーが存在するはずだが、それについては何もわからない。 そして廃病院を出てからも宛のない旅を続けている。 探しているものは何だろう。ゆっくり休める場所だろうか? 同じ境遇の仲間たちだろうか。 「とはいえ、さすがに当ても無しに歩きまわるのも飽きたわね。なにか目標か目的地程度は欲しいわ・・・」 歩きながら『くりいと人形』がぼやく。 だがその言葉は最後の方はかすれ、ほとんど聞こえないようになっていた。 そしてキョロキョロを辺りを見回しはじめる。 隣を歩いていた『くしざしローズ』も同じだ。眉根を寄せて遠くを見詰めている。 「ねぇねぇ どうしたの? ねぇねぇねぇってばぁ」 2人の変化に気づいた『ぬとぬとバーミン』がぬめぬめと粘液を散らす。 「ああもう、ちょっと大人しくしていて」 だが『くりいと人形』がそう言うと、「ぁぅ」と小さく言って大人しく黙った。 『ぬとぬとバーミン』は『くりいと人形』のことを姉として信頼していて、よく言う事を聞くのだ。 だがそれでもやはり教えてほしそうに姉二人の顔を交互に見上げている。 「……敵みたいね」 「……みたいねぇ。ったく、なーんでこいつらはアホみたいにアタシ達狙ってくんのかしら」 2人は周囲の建物に潜んでいたアンデッドの存在を感じ取っていた。 いつの間にか囲まれている。そう言っているうちにどこからか集まってきているのか、続々とその数を増やすアンデッド。 2人の言葉と周囲の状況を見て、『ぬとぬとバーミン』にもようやく事態が把握できた。 「逃げた方がよさそうね……」 向こうには広場がある。走りぬければなんとか逃げ切れそうだ。 『くりいと人形』がちらっと『ぬとぬとバーミン』を見る。 『ぬとぬとバーミン』はその視線の意味を理解できなかったが、とりあえず頷いた。 「……あーもう、面倒だわ。気合い入れて走んなさいよバーミン」 『くしざしローズ』がそう言って走り出す。 『ぬとぬとバーミン』は這いずりまわるその性質上、足が遅い。 と言ってもアンデッド技術の力のおかげか、外見からは想像がつかないほどの俊敏さで、 人間とそれほど変わらない速度で動きまわることができる。 少女達の歩きについてこれるのだから、速度までなめくじ並であるわけがない。 だがそれでもいつも少し遅れ気味についてくる姿を思い出すとやはり不安が残る。 (ええいしょうがない) 『くりいと人形』は嫌そうな顔をしながらも、バーミンが遅れないよう手を引いて走り出す。 実際は手というか、軟体のような体のひだのような部分なのだが。 (ぬるぬるしてるわ……) (はやいよぅ〜) 手を引かれ必死に走る『ぬとぬとバーミン』。 『くりいと人形』は『ぬとぬとバーミン』のことを姉妹として姉として、守ってやらなければならないとは思っていたのだが、このぬるぬるが生理的に少し苦手だった。 『くしざしローズ』も『ぬとぬとバーミン』のことをやはり嫌っている。 彼女の場合は生理的な問題のほかに、あまり子供が好きではないという理由もあったが。 走る3人。広場まであと一歩……というところで、地面から腕が生えてきた!! 地面の中にアンデッドが潜んでいたのだ! 『くしざしローズ』はとっさにその腕を回避する。 「きゃっ、しまっ」 だが『ぬとぬとバーミン』を引っ張っていた『くりいと人形』は脚を掴まれてしまう。 アンデッドの恐ろしいパワーで『くりいと人形』の脚が締め付けられる。 「――! くりいと!!」 (ああもう、だからあんなノロマ放っときゃ良かったのよ!) 『くしざしローズ』が叫ぶ。 彼女はさらに広場の反対側からも何者かの気配を感じ取っていた。 迫るアンデッド。周囲を囲まれた……数も多すぎる。おまけに、『くりいと人形』は脚を掴まれてうまく逃げられない。 「……ナニコレ、囲まれてんの?」 「ひゃ、おねーちゃんっ おねぇちゃあん」 『くしざしローズ』が焦ったように呟き、『ぬとぬとバーミン』が泣きはじめる。 「くっ、私は大丈夫だからおちつきなさい」 「くりおねぇちゃん…ぬとのせいだよごめんね、ごめんね、  ぬとぬとしてて、ごめんね、いっつもミソッカスで、何もお手伝いできなくて、のろまで、ごめ…ごめんなさぁい」 シクシクメソメソと涙を流す『ぬとぬとバーミン』。 アンデッドの凄まじいパワーで脚を握られているが、『くりいと人形』自身もアンデッドだ。 多少脚が傷ついても問題無いし、大して痛みもない。 追い詰められてしまったという焦燥感に駆られながらも『ぬとぬとバーミン』をなだめようとする。 「うわぁぁぁん、うわぁん。うあーーーん うぁぅ〜〜ぅぐ、ぶぶ。ゲぶ」 「ちょ、ちょっと……そんな吐くほど泣かなくても……」 追い詰められた事と、『くりいと人形』が脚を掴まれたストレスのせいか、 泣きながら【はらわた】を吐いてしまう『ぬとぬとバーミン』。 一方、少し離れた場所にいる『くしざしローズ』は背中の【にくむち】を伸ばし『くりいと人形』を引っ張ろうとするが……焦ってうまく行かない。 「くっそ、触手なんて器用に使える分けねーだろーが!!」 彼女の【スパイク】が生えた【にくむち】は攻撃用だ。精密な動作には向いてない。 さらに元々『くりいと人形』を守ってやらなければという気持ちが強い彼女は、 『くりいと人形』を傷つけてしまうのを恐れ、助けるためとはいえ凶暴な自分の武器を向けるのに躊躇してしまうのだ。 そうする間にもアンデッドの包囲網は少しづつ狭まってきている。 窮地に陥る3人。 と……その時、どこからか声が聞こえてきた。 「そこの三人!伏せろ!!!」 「え? 誰?」 「!?」 「ぬ、ぬともたすけ……え、だれ…」   『くしざしローズ』が声に反応してすぐさま伏せ、『くりいと人形』も混乱しつつも声に従う。 元々背の低い『ぬとぬとバーミン』も体をさらに縮こまらせた。 「構え……てぇっ!!」 声と共にガガガガガガガガガと暴力的な音が鳴り響いた。 伏せた3人の真上を銃弾の嵐が飛び交う。これでもかというほどの激しい掃射だ。 「ビューティフォー……」 「ひぁぁ」 「……」 茫然と称賛を漏らしながら惚けたように頭上の弾幕を眺める『くしざしローズ』 さらに怯えて縮こまる『ぬとぬとバーミン』に、息をのむ『くりいと人形』 そして数分後……3人の周囲から、アンデッドは消え去った。 いや、正確に言うと……『敵のアンデッド』は消え去った。というべきだろうか。 「もう頭上げていいかしら……?」 恐る恐るといった様子で『くりいと人形』が埃をはたきながら姿勢を起こす。 「っと、くりいと大丈夫?」 『くしざしローズ』は起き上がってから何より先に『くりいと人形』の元へ駆け寄って来た。 だがそこに『ぬとぬとバーミン』が立ちふさがる。 「だめー! だめだよー。ローズおねーちゃんはだめなの。くっついちゃだめー」 「あぁん……?」 『くしざしローズ』は何言ってんだコイツ、みたいな目で『ぬとぬとバーミン』を見る。 「君たち、怪我はないね?」 そう声をかけてきたのは眼帯をして軍服を来たドール……つまりこれまた少女のアンデッドだ。 後ろには武装した20人ほどの少女達。彼女達の銃撃が3人を救ったのだ。 先程、広場を抜けた先から来たアンデッド。その後ろから、ドールたちの部隊が迫っていたらしい。 「ありがとう。助かったわ」 脚を掴んでいたアンデッドを破壊した『くりいと人形』がひとまずお礼を言う。 「ローズおねぇちゃん、なんかあやしー。だからだめ」 「ローズおねーちゃんいじわる。ほんとのローズおねーちゃんじゃないみたい」 「ぬと知ってるもんー。いつものローズおねえちゃんだったら、さっきだってくりねぇちゃんのことくらいカッコ良く助けてくれてたもん」 「……これだからガキはイヤなのよ」 その後ろで『ぬとぬとバーミン』がなにかよくわからないことを言い張る。 『ぬとぬとバーミン』は『くしざしローズ』をカッコイイ姉だと思って憧れているところがあり、 さきほど助けられなかったあたりがその理想の姉像と違ったので文句をつけているのだろう。 子供特有の筋の通らない言い分に、『くしざしローズ』も口をとがらせる。 傍から見れば彼女自身も子供といっていい年齢なのだが。 「んもう2人とも喧嘩しないの!  ほら、あなたたちも挨拶しなさい」 『くりいと人形』がそこに割り込んだ。 『くしざしローズ』は『ぬとぬとバーミン』を睨み、ばつが悪そうに眼帯の少女に向き直る。 『ぬとぬとバーミン』は人見知りしているのか、無言のまま不審の目で少女たちの部隊を見た。 「…………」 「……アホが失礼してるけど、とりあえずありがとね。助かったわ」 『くしざしローズ』もとりあえず挨拶を終え、眼帯の少女が口を開いた。 「私の名前はアニス。君たちはどこから来たんだ? 奴らに襲われてい様だが……」 「ぬと アホじゃないもん」 「バーミン、ちょっと黙ってろ……向こうの廃病院から、かしらね。私はローズよ」 「……あっちの方から、いっぱい歩いてきたの」 2人も答えつつ自己紹介する。 「私は、あー『くりいと人形』。私たちあてもなくさまよっててね……」 『くりいと人形』もこれが名前でいいのだろうか……と自分の名前に違和感を抱きつつも返事を返す。 「……よくわからないが、君たちは私達と違う様だな……ずっと歩いてきたのかい?」 「ええ、私たちを作った……目覚めさせた奴の事も何もわからないわ。手掛かりもなくさまよってるだけ」 『くりいと人形』がそう言うと、大体の事情はわかったと思ったのかアニスは話題を変え、 申し訳なさそうに謝ってきた。 「戦いに巻き込んでしまって済まない……おそらくこのアンデッドは私達を狙っていたんだろう」 「なにそれ、あんたら他のアンデッド相手に戦争でもしてんの?」 「あんなにいっぱいのに?」 『くしざしローズ』が疑問の声をあげ、『ぬとぬとバーミン』も舌足らずな口調で不思議そうにする。 「戦争か……そのようなものだろうな。迷惑をかけたお詫びを兼ねて、我が基地に招待したいのだが」 「隊長!!危険です!!これもネクロマンサーの罠かもしれませんよ!!」 アニスの言葉に、後ろに控えていた少女の1人が前に出てそう言う。 「それはこっちから見ても言えるけどね。基地って言われて行ったら罠ってこともあるし……」 「というか、基地ィ? そんな大層なもんがあるわけ?」 『くりいと人形』が少々警戒を滲ませた声で答え、『くしざしローズ』は驚きながらも懐疑的な様子だ。 「たいちょーだって、かっこいいねぇ」 『ぬとぬとバーミン』はのんきにはしゃいでいる。 「クミン、考え過ぎだ。私達の敵に、今までこうやってしゃべる事のできたものが居たか?」 「それは……失礼いたしました。隊長の判断に従います」 クミンと呼ばれた少女はまだ少々納得のいっていない様子ではあったが、隊長であるアニスの言葉に従う。 アニスは一つ頷き、3人の方へと向き直って続きを話しはじめた。 「私達は、『基地』で目覚めたんだ。最初からね。  そして、そこに襲い来るアンデッドの軍勢……戦うしかなかった  おそらく、全てはネクロマンサーの手の中なのだろう。口惜しいが……」 「……さっきみたいなのとずっとやりあってたの?よくやるわねぇ……」 感心したともあきれたともつかない様子で『くしざしローズ』が相槌をうつ。 「まあそっちの事情はわかったけど……」 「……そして、君たちを招待したのにも、実は裏がある」 『くりいと人形』が何か言いかけるが、それに先んじてアニスが口を開いた。 「……ほーう、言ってみなさいよ」 目線を鋭くした『くしざしローズ』が『くりいと人形』を庇うように位置を変えた。 それを見た『ぬとぬとバーミン』も真似をしてずりずりと移動し、「えんご」と言う。 「裏というか、そうだな……少しの間、基地の防衛を援護してほしいんだ」 「そう言われてもね。私たちがそれをするメリットがあるのかしら」 「私達は、なんのメリットもなく君たちを助けた」 「それを言われると弱いけど……」 『くりいと人形』が居心地悪そうにする。 確かに恩はあるが、彼女は姉として2人を守る義務があると考えている。 出来れば危険なことはさせたくないのだ。 「確かに助けてもらった恩はあるけどねぇ……」 「……というのは冗談だ。  私達の戦いを助けてくれるのならば、君たちの戦いを手助けしようじゃないか。  フィンネル! ここに」 「マム! 情報収集ならおまかせよ!! マム!」 『くしざしローズ』も同様に困ったように眉根を寄せる。 だがアニスは恩着せがましいことを言わず、薄く笑みを浮かべると腕を上げてジェスチャーした。 背後の部隊から少女が進み出てきて元気よく答える。彼女がフィンネルだろう。 「……まずアンタらの名前覚える時点で挫折しそうだわ」 「たすけあい? ぬととローズおねぇちゃん、くりおねぇちゃんみたい」 「そっちはいっぱいおねえちゃんがいるんだねぇ」 『くしざしローズ』が軽口を叩き、 『ぬとぬとバーミン』はさきほどまで警戒していたのを忘れたかのように、いいなー。と無邪気にはしゃいでいる。 「彼女は基地の科学班だ。君たちの目覚めた場所を教えてもらえれば、そこからネクロマンサーの痕跡を追う事ができるかもしれない。」 「なるほど。確かにそれなら私たちにも利益があるわね・・・」 「科学班なのに情報収集なのかよ……あれか、科学調査ってやつか。  ……ま、なんにせよ一回基地に行ってみるのはいいんじゃない?」 考え込む『くりいと人形』。『くしざしローズ』はノリ気なようだ。 「隊長には指揮する能力が、私には科学知識が。そしてクミンには高速戦闘の技術が……なんのためにかわからないけど備わっていたのよね。」 「おそらく、ネクロマンサーが私達の事をなめているのだろう……あるいは、そのほうが面白いと考えたのか?」 補足するようにフィンネルが説明し、アニスが忌々しげに呟く。 「でも私たち3人が加わった程度で何か変わるかしら」 「君たちは、私達のネクロマンサーから見た『イレギュラー』だ。もし奴が計算に計算を重ね、戦力を決定しているのならば……それの裏をかかなくてはならない。」 「よーするに、お互い不確定要素を取り込んでネクロマンサーの鼻を明かしてやろうってことでしょ?  ……面白いじゃない」 「ねぇねぇね。くりおねぇちゃん。やろうよー」「たすけてもらったおれい」 アニスに利益を提示され、さらに 『くしざしローズ』だけでなく『ぬとぬとバーミン』もやる気を見せたことで、『くりいと人形』も折れる。 「それなら私たちの存在がバレない方がいいわね。そうね。とりあえず基地に行く、か  ま、2人も乗り気みたいだし、助けて貰った恩もあるし。わかった。協力するわ」 3人が協力することを確認するとアニスは頷き、具体的な説明をし出した。 「私達が敵の本拠地に行く間、君たちにはクミンと協力して基地を防衛して欲しいのだ。彼女の能力は、少人数でこそ生きるからな」 「隊長、何度もいいますが基地は私一人でも大丈夫です!」 「君の力はわかっている。分かっているが、それはできない。私の判断に従ってもらう。」 やはり部外者の3人が信用できないのか、直接協力する当の本人であるクミンが一歩前に出て意見する。 とはいえアニスの考えは変わらないようだ。リーダーに逆らうわけにもいかず、クミンもしぶしぶ納得した。 「お友達どうし離れ離れになっちゃうけどいいの。さびしくないの」 「……覚悟はしている」 そんなアニスに『ぬとぬとバーミン』が子供らしく素直に問いかけると、アニスは苦い顔をした。 クミンと別れる事ではなく、おそらくこの戦いで二度と会えなくなるであろう仲間の事を考えているようだ。 「かくごしないで、ここから逃げちゃえばいいのに。そしたらみんなで一緒にいられるのね」 「それは、できない。私達を弄ぶネクロマンサーに一泡吹かせるまでは……ここから、逃れる事はできない」 アニスの決意は固いようだった。そしてそれは隊の総意でもあるのだろう。 「みんなかたひじ張りすぎ」 どこか遠くを見るような険しい目をしているアニスを見て、『ぬとぬとバーミン』は【かた】も肘も収納した体で小さく呟いた。 一方、いつのまにか会話に参加していなかった『くりいと人形』と『くしざしローズ』は。 「……それとくりいと、アンタもーちょっと緩く考えて大丈夫よ?なんかあったらアタシが守ってあげるしね」 「ちょ、ちょっと止めなさいよ。真面目な話し合いの最中よ・・・」 『くしざしローズ』が『くりいと人形』の肩を組んで指でつんつんとほっぺを突っつき、 『くりいと人形』は口では拒否し、くっついてくる『くしざしローズ』を引き剥がそうとぐいぐい押すものの、 本気で嫌がっていないためかどこか力がこもっていない様子であった。 「では基地まで案内しよう。ついてきてくれ」 「はいはい行くわよ」 「りょーかい、行きましょうか」 アニスに声をかけられると、『くりいと人形』は慌てて『くしざしローズ』から離れた。少し顔が赤い。 『くしざしローズ』はそんな『くりいと人形』の様子を見て、ニヤニヤ笑いながら両手を頭の後ろで組んでクミン達について行く。 「あ、あ、 まってよー」 そしてやはり出遅れる『ぬとぬとバーミン』。 「ほらほら、ちゃんとついてきなさい」 そんな『ぬとぬとバーミン』を『くりいと人形』はひょい、と抱えた。 アンデットである彼女達に人間1人分程度の重さは大したことは無い。 問題はそのぬめぬめだが……さっき逃げる時に触ったせいでもうぬちょぬちょになってしまったので、気にせず抱えることにしたのだ。 「あっ 高いー」 「よごしちゃうね ごめんね」 「わぁ、いっぱい見えるよ!やま! やまだー」 抱えられて視点が高くなりはしゃぐ『ぬとぬとバーミン』。 (ぬめぬめしてるのはこの子のせいじゃないし・・・いい子よね。なんとかローズと仲良くしてあげられないかしらねえ・・・) そっと溜息をつく『くりいと人形』。 こうして一行はアニス達について基地へと向かった…… * 「ここが私達の基地だ」 アニスが3姉妹にふり返る。 「ひろいね!」 『ぬとぬとバーミン』が素直な感想を漏らした。 実際、基地はちょっとした学校の半分位の広さはある。 視点の低い『ぬとぬとバーミン』には他の者よりもさらに大きく見えたことだろう。 「ムショみたいねぇ。中に入るのは子供ばっかだから、少年院?」 『くしざしローズ』も思ったことを言う。 確かに基地の外見は周囲がコンクリートの壁に覆われ、みようによっては刑務所のように感じるかもしれない。 「少年院か。ん、なるほど言われてみるとそう見えてくる」 アニスは『くしざしローズ』の言葉を軽く流し、3人を中に案内する。 「ここは研究室、ここは会議室、ここは訓練室……で、こっちが客室だ」 「いっぱいおへやあるねぇ」 「へぇ〜」 『ぬとぬとバーミン』が楽しそうに言い、 『くりいと人形』が感心したような声を漏らす。 「ここにいる間は自由にしてくれて構わない。が……あまり荒らさないでもらいたい」 そんな様子を見てアニスが苦笑いしながら言う。 「そういえばなんでここを防衛する必要があるのかしら・・・」 「こんだけ広けりゃ拠点として便利だし、拠点を守るのは当然でしょーよ」 『くりいと人形』の呟きに即座に『くしざしローズ』がつっこむ。 確かに拠点はあれば便利だろうが、『くりいと人形』としては 隊の中でクミン1人だけ残し、さらにわざわざ部外者を招いてまで防衛するほどだろうか、と考えたのか。 その言葉を聞いて、アニスが少しはにかむような顔で3人をさらに奥へ案内する。 「そうだな守るものという程ではないのだが……実は、私達の宝物があるのでな。  もちろん、荒野にこの人数でたむろっていては危険だから、単純に拠点としても失うのは痛手だがな」 アニスが奥の部屋に通じる扉を開けると、そこには数多くのぬいぐるみや可愛い服が飾ってあった。 「ほぁ! かぁわいいー」 「私達の体を治すための裁縫道具で……非番の姉妹がこういうものを作っているんだ」   3人とも感心したように辺りを見回す。 「非番とかあるのねえ・・・」 「いいなぁいいなぁ」 「……はー、みんなの宝物を集めてるわけ?  なんかそれ、怖くない? アタシは肌身離さずもっときたいんだけど」 『くしざしローズ』は思わず懐に手を添える。 そこには写真が入っているのだ。彼女の【たからもの】が。 「気に入ったのならこれ持って行ってもいいよー?   なんていうか、こうやって作る事自体が宝物っていうかね……。これなんてどうだい?」 「……いやー、アタシは遠慮しとくわ。かさばるし」 後ろからついてきていたフィンネルが部屋に入り、耳の尖った動物のぬいぐるみを持ちだす。 『くしざしローズ』はちょっと欲しそうにしたが、自分の背中から生えている刺々しい触手を見て遠慮するように言った。 (この拠点自体がたからものになってしまっている、のかしらね・・・) 「それはなんの動物・・・どうかしたバーミン?」 彼女達にとって、ここはただの拠点以上のものなのだろう。 そう考えていた『くりいと人形』は、ふと、『ぬとぬとバーミン』が妙に静かなのに気がついた。 心ここにあらずというか、なにかを思い出しているような感じである。 そしてフィンネルを見ていたかと思うと、床に目を落として洟をすする。 「クマさんだよ!」 「……クマの耳って丸くなかったっけ?」 そんな『ぬとぬとバーミン』の様子に気づかないフィンネルは、 どう見ても狐のぬいぐるみを元気に紹介し、『くしざしローズ』に突っ込みを入れられていた。 「……君たちも作ってみるといいんだよ……」 「・・・そうね。作ってみるのもいいかも。  まあでも、貰うにも作るにも、全部終わってから考えるわ」 やられる気はないが、敵が攻めてくるかもしれないという事態を前にして、 あまりそういう気分にはなれないのだろう。 『くりいと人形』がそんな返事を返していると、うつむいていた『ぬとぬとバーミン』が顔を上げる。 「ちょうだい、できないの。くまさん持って行ける手、もうないから」 「くまさんのお耳縫ったりもできないの」 もう出来ない。どこか悲しそうな声で言う『ぬとぬとバーミン』。 かつて……こんな姿になる前は彼女も縫物をしていたのだろうか。 「……じゃあ、結わえてあげる!!」 「わー。いいの? いいの?」「ありがとう!」 するとフィンネルが殊更明るく言い、クマの人形におぶり紐をつけて『ぬとぬとバーミン』に結わえつけた。 『ぬとぬとバーミン』はぱっと笑顔になり、お礼を言いながら、 背中のぬいぐるみを見ようとしているのか、自分の尻尾を追う犬のようにくるくると回る。 「あなたにははいこれ!」 「もう、あとでいいってば」 さらにフィンネルはソーイングセットと布を渡す。 なんだかんだ言いつつも受け取ってしまう『くりいと人形』。 「おいおい……まあ、まだ沢山あるから問題ないか」 「くりおねえちゃんもきつね作るの」 「おーおー、よかったじゃない」 アニスが苦笑いし、 『くしざしローズ』が興味無さげに『ぬとぬとバーミン』を一瞥し、『くりいと人形』が貰った道具を覗き込む。 「あとはだ。実は向こうに水の出るシャワーがあるんだ。  私としては、ぬいぐるみよりもそれが惜しい」 「シャワー! マジで!?」 アニスの言葉に、『くしざしローズ』が目を輝かせる。 3姉妹が目覚めた廃病院にはそんなは物無かったから、気にしていたのだろう。 「あ、後で使わせてもらってもいい?」 「もちろんだ。私達は明日出撃する……それまで自由にここを使ってくれて構わない」 「ローズも案外綺麗好きね」 そんな様子を見て『くりいと人形』は(だからバーミンが苦手なのかしら?)と考える。 もちろん『くりいと人形』自身もヌルヌルが好きなわけではないが…… 「ほら、アタシの身体って【ちみどろ】でしょ?正直気分悪いのよ、これ」 「ローズおねえちゃんも濡れてるところがぬととおそろいだね!!」 「うるせーぞナメクジ」 「えへえへ」 そんな事を考える『くりいと人形』の前で、さっそく口喧嘩する2人だったが、 『ぬとぬとバーミン』はお揃いが嬉しいのか、あるいは暴言にも慣れたのか笑顔だ。 「……それに、昔シャワー浴びんのが好きだった気がすんのよねぇ。スポーツ少女だったのかしら」 「では詳しく作戦について話そう。シャワーの後にするか?」 「そうね・・・ローズも入りたがってるし先にシャワーで」 「んじゃ、お言葉に甘えてシャワー浴びさせてもらうわ」 そうと決まればさっそくアニスに案内されてぬいぐるみ部屋を出る。 「ねぇねぇねぇ、ローズおねぇちゃん。お水出したままにしといてほしいの。コックに手ぇ届かないから、壁よじのぼらなきゃならないの」 「はいはい、わかったわよ」 「くりおねぇちゃんもシャワーたのしみ?」「おゆ出るかなぁ」 「そうねー、できれば服の洗濯もしたいけど」 はしゃぐ『ぬとぬとバーミン』に、『くしざしローズ』が面倒そうに返事をし、 『くりいと人形』は2人が喧嘩しないか見守りながら、 3姉妹はわいわいと騒ぎながらシャワー室へと向かった。          _,、=:ニ;‐、、--――‐y、,_     ,,r;;;;''''=―--、、,_        /´  ヽ,ヽ,.゙'l,.゙Y;--',r'゙'ヾ;'V.j   /∠,,.r_;'゙-‐-,<゙゙ヽ,'i、'‐、,       ./_   .,,_j ゙l l,. Y/゙'ヾ、;、ノ,r;'|  /jフ,r-、ヽ、  _,,>.゙'ー;゙' ーi,. |'i,       j.ヾ!  ト‐! | .| .|,_ ./,.〈. 〉| ./ .(゙   _>゙'゙ r''゙´'i,゙l, ,j レ! .|:|       .|il,  __  j .j゙ .l  ト,゙',/ j.゙ r;| .レ'゙''‐ニ'''゙r''゙´ .゙l,ヽ,. ,ノ ゙ r''1.jノ       .|.l,゙l, ゙ー゙.ノノ  / / ゙l ゙l,ヽr',r'l ゙;| .ト、,. /./´゙ヽ;.、 ノ ,゙rッ  .,Y';V       | l,.゙ヽ--'゙ ,ノ  /  l, ゙'゙,,.l, ,j ゙| l,ヾ,、--、,,,、'_, r''゙ l   / li,;)       l,. ゙'i,  /  ,rシ-、,ィ) l,゙i,V/゙j゙ /゙,,、、、,_  ゙\!.レ゙  .| Y゙ 『キング・クリムゾン』!!        ゙l゙i,・ヾi, ,/ィl、・_ノ ,;:: ゙シ'i.l,ノ ./゙    \  ゙Y:   .l /        | `ラ´゙'''´ ''"'´  .|  |:.r'`V'''" ̄`゙ヽ、 ゙'i,  |.   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[        .:::::::::::::::Y゙   .,r',、 「゙´  | .| jヾ、--、ヾl,    /,、 ゙l,.゙l、-';j;ノ::::::゙レ゙lj゙   ........::::::::::::::::::::::::::|  / ./.| .レ-‐' 'ソ::l,゙l, ./.∧、ヽ、,,/,/,,゙'i,,゙L、‐'゙::/::://     :::::::::::::::::::::::::::::j゙  レ:'二i .i''゙゙´| .|:::::::)、V.l゙  ゙l,.゙'V /   ゙'i, ゙V゙ /ノ゙ /゙L,___,,,_   : : :: :::::l ..゙T´ .| |  ,.| .|::::::/ ゙'i,゙l,  `i , l,    〉,,.〈/  .ヽ、,,,,,、、-―‐-、ヽ、  ..:: .:/   ┌─────────────────────────┐   │        スタンド名―「キング・クリムゾン」          │   │           本体―?(組織のボス)             .│   ├───────┬────────┬────────┤   │  破壊力―A  │.   スピード―A   .│.  射程距離―E .│   ├───────┼────────┼────────┤   │.  持続力―E .│ 精密動作性―? │.   成長性―?   .│   └───────┴────────┴────────┘   A―超スゴイ B―スゴイ C―人間と同じ D―ニガテ E―超ニガテ 一行はシャワーを浴びた!! 服も適当に洗濯し、会議に移る。 会議の内容は簡単な物だった。 明日の朝、日が登り次第ドール部隊20名で敵の陣地に攻めこむ。その間、本拠地は3人とアニスの合計4人で防衛する。 アニスが残る理由は簡単である。『強いから』だ。 攻撃部隊20人を17人と3人に分け……『居ないはずの3人部隊』で虚を付く予定らしい。 戦略の話になると、専門的な分野の話になったので、三人にはよく理解できなかったが、 とりあえずここを守ってくれればそれでいいというものだった。 「以上だ。明日は副長のクミンと共闘し、ここを守りぬいて欲しい。  では本日は解散!」 「ぐぅ」 「……オイ起きろナメクジ、会議終わったぞ」 「ぅおぁ・・・・うぉ・・うん、ぬとがんばる」 『くしざしローズ』がいつのまにか寝ていた『ぬとぬとバーミン』を小突く。 鼻ちょうちんをふくらませ、半分寝ぼけたような声ながらも一応返事はした。 「さすがに訓練とかしてるだけあるわね」 行動が統率されている事だけでなく、戦略などの話に感心したのだろう。 『くりいと人形』はぞろぞろと会議部屋を出ていくドール隊を見て小さく呟いたのだった。 * 「いっちゃったね。よかったのかなぁ」 そして翌朝。アニスを見送った後、3人はは副長のクミンと共に待機していた。 『ぬとぬとバーミン』が客間の窓の外を眺める。部隊はとっくに出ていって彼女の目には荒野しか映らない。 「さーて、なんもなければそれが一番なんだけどねー」 『くしざしローズ』がソファーで伸びをしながら言った。 クミンに「私は外に見張りに出ている。交代して欲しい時、敵が来た時は声をかけるから客間で待機してくれ」 と言われたため、現在客間にいるのは3人だけである。 見張りを1人に任せるというのもなんだが、3人は素人なので見張りのノウハウなど無い。 それにベテランのクミンの言う事を聞くのは当然だし、隠し戦力なのだからあまり表に出ない方がいいのだろう。 (どうして1人だけ強く作ってあったりするのかしら? 元々の素質とか関係あるのか・・・) 『くりいと人形』はソファーに腰かけ、頬に手をつきながらぼうっと考える。 フィンネルが言っていた通り、指揮能力を持つアニス、科学知識を持つフィンネルと、各自特徴を持たされているのだから 別段クミンが強くてもおかしなことは何も無いのだが…… (私たちを作った奴がここのネクロマンサーと同じで、私たちが来たことも計算のうち! とかだったりしないといいんだけどね) ついこんな事を考えてしまう。 やはり自分は心配性なだけなのだろう、と『くりいと人形』は息を吐く。 「油断してるところをやっつけるっていうけどさぁ。みんなたくさんなかよしなんだから、いっぺんに全員でたからもの持って逃げちゃったってよかったって、ぬと思うよ」 「逃げりゃいいってもんじゃないでしょうよ。あっちは追いかけてくる気満々なんだから」 「そうねえ・・・この基地自体が彼女たちのたからものなんじゃないかしら。長く使ってれば愛着もわくものよ」 『ぬとぬとバーミン』が話しかけてきたので、『くしざしローズ』が答え、 『くりいと人形』も考えを打ち切り自分の予想を話す。 「そのうち諦めてくれたり、しない、かなぁ」 「おそとは今日もすなっぽいねぇ。シャワーがあってよかったねぇ」 「いっぱい」「ぞんびっび」 窓から隊が消えた方の荒野を見ていた『ぬとぬとバーミン』が 急にわけのわからないこと言いだしたので、姉2人はなにごとかと目を向ける。 「たくさんきたよぅ、どうしよう〜〜」 『ぬとぬとバーミン』はそのまま混乱したように蛇行してニロニロと這い回った。 「えっ? ほんと?」 「ぶわーーって。ぶわーーーっていたの」 「意味わからんこと言うな。それならクミンがなんか……」 『ぬとぬとバーミン』の言葉に、姉2人も外を覗いてみると、確かに荒野に大量のアンデッドが襲ってきている。 もう数分もしないうちに辿りついてしまうだろう。 2人がとっさに信じられなかったのは『くしざしローズ』が言うように外で見張ると言っていたクミンからなんの連絡も無かったからだ。 そして、こうして窓から見る限りでは外にいるはずのクミンの姿は見えない。 「おかしいわね、クミンからの連絡はないけど・・・とりあえず外に出ましょうか」 「クミンちゃんもぬととおそろいでねてたんだよ」「きっと」 『くりいと人形』が立ちあがり、ドアを開けようとするが 「あ、あら? ちょっと・・・開かない!?」 「……わーお。  ナニコレ、盛大な罠? 嘘でしょマイゴッデス」 鍵がかけられている。慌てる2人。 「えい」 そこへ『ぬとぬとバーミン』が後ろからドアに向けて体当たりをかました! 『ぬとぬとバーミン』はその見かけによらず【怪力】である。 派手な音をたててひしゃげ破壊されるドア。 「きゃっ! ちょっとびっくりしたけどよくやったわバーミン、出るわよ」 「でかしたナメクジ!」 「わぁい」 外に飛びだす姉2人。 『ぬとぬとバーミン』が少し遅れて褒められて嬉しそうにしながら這い出る。 (というかどうしましょう。罠? でも最初は助けてもらったし・・・) 「どうする二人とも? 約束通りならここを守るわけだけれど・・・」 「とりあえず外出て、クミン捜すわよ。守るにしたって外には出なきゃ行けないしね」 「あとでドア直せって言われないかなぁ」「ローズおねえちゃんに賛成なの」 さらに外に向かおうとする3人だったが 「なっ……?気づくのが速すぎる……?」 クミンは門の外にいた。 しかも、その動きはどう見ても大量のアンデッドを呼びよせて集めているように見える。 「えっ?」 「っていきなりいるし」 驚く『くりいと人形』と『くしざしローズ』。 「とりあえず事情を説明してもらいましょーか? できれば手短にね」 『くしざしローズ』が警戒しながら睨むように言うと、クミンはフッと鼻で笑い睨み返した。 「説明?なにを説明すればいいのかしら?  そもそもあなた達、なんでネクロマンサー様に逆らおうなんて考えているの?」 「あー、そういう役割なわけ、最初から? 1人だけ強く作られていたりしたのもそういう理由?」 「他の奴等はいまごろどーなってんのよ」 「えー。なんか、がっかり。クミンちゃん、あたまよさそーに見えたから、色々かんがえてるかんじのひとだと思ったのにぃ」 一番警戒していたくせに一番困惑している『くりいと人形』。 冷静に状況を把握しようとする『くしざしローズ』。 最後に『ぬとぬとバーミン』が多少場違い感のある感想を漏らした。 「さあね……『本拠地』はもう捨ててきたわ、あそこはもう必要ないもの。  頑張って、『本拠地』を攻め落として……やった! 勝てた!! 帰ってきたら何もなくなっているの。ふふ! みんなどんな顔をするかしら」 「……ってことは、アイツらは無事な訳ね。そこは安心したわ」 本拠地というのは今アニス達が攻めている場所のことだろう。 「彼女たちがネクロマンサー様の本拠地を見つけたときは驚いたわね。本当に。でも、ネクロマンサーさまはそれもお見通しだった。  さすがにあなた達は予想外だったわ……もうネクロマンサー様は移動した後とはいえ、ぎりぎりで勝てる戦力だけを用意していたから」 「運が無いわねえ・・・」 「ついでにいうと趣味も悪いわよ」 「よそうがいだって」「えへへぇ。知らないうちにおやくにたったんだねぇ、ぬとたち」 軽口を叩く3姉妹だが、これから始まる戦闘に向けて、その体は自動的に整えられつつあった。 彼女達もまたドール……戦争用に開発されたアンデッド技術の塊なのである。 「アニスとかは拍子抜けしているかもしれないわね? まあ、いいわ。ここを制圧して、彼女には絶望してもらうの。  それがネクロマンサー様のお望み。さあ、あなた達……これだけの軍勢を止められるかしら?」 「ああもうなんでこうなるのかしら・・・2人とも、気合入れなさいよ?」 「クミンちゃぁん、やめなよー」 「アタシの心配は勝った後に誤解されそうってことぐらいよ!」 クミンが背中に手を回したのと同時、『くりいと人形』が【ガントレット】の腕を奇妙に広げ、 『ぬとぬとバーミン』も【くされじる】の分泌を増やし、『くしざしローズ』は背中から【にくむち】を伸ばす。 各自臨戦態勢をとり、一瞬の静寂。 最初に動いたのはクミンだった。 取り出されたのは【ショットガン】。 いつのまにか手に収まっていたかのような凄まじい速度の抜き撃ちで銃弾が雨霰のように連射される。 「ぎゃん」 『ぬとぬとバーミン』の【ほね】が砕け、グジョっと濡れた【はらわた】がグロテスクに飛び散る。 「なかみでちゃったよぅ」 「隊長にダメージを与えられなかった以上、せめてこの拠点はネクロマンサー様に捧げるのだ!」 「クミンちゃんのかんがえなしー。あやつりにんぎょう!」 「バーミン! くっ、めちゃくちゃ撃ってくるわねあの娘」 続いて『くしざしローズ』に銃口を合わせるクミン。 だがそこに割り込むように『くりいと人形』が【ガントレット】を振るった。 【死の手】が閃き、無骨な指先から放たれた【単分子繊維】が宙を舞う。 「でぇい!」 「おねぇちゃぁん」 さらに『ぬとぬとバーミン』がそのほとんどあって無いような短い【うで】を振るい、 ぬめぬめした汁を飛ばし、クミンの行動を阻害することで支援する。 「チイッ!! 反撃かっ!!」 「ありがとバーミン!」 【単分子繊維】はクミンの【こぶし】を切り裂く……が、浅い。 クミンの骨は【スチールボーン】……かなり頑丈に造られているらしい。 だが『くりいと人形』の攻撃は終わらない。 オーケストラの指揮者のように両腕を操り、指先が複雑に挙動する。 【あし】に糸が絡みつき、片方の【ほね】にまで損傷が達する。 「なかなかやるわね……!」 「2人ともっ、援護してっ」 「オーライ、任せな!」 「うぇぇい」 それでもかろうじて立っていたクミンに、『くしざしローズ』が【ちみどろ】を吹きかけ、 『ぬとぬとバーミン』が【よだれじた】を伸ばして妨害する。 「何っ!? 糸の軌跡が見えない!」 クミンは【うで】を振るい【単分子繊維】の糸を遠ざけようとするが、血飛沫で視界が塞がり、 伸ばされた舌で体勢を崩されてはどうしようもない。 クミンの両足に絡みついた糸が圧力を増し、破裂したかのように脚部を切り裂いた。 これで機動力は奪われた。クミンが3人を突破して基地に向かうということは阻止できただろう。 だがクミンが呼びよせたアンデッドは未だ基地に向かって移動中だ。 特に足の速い犬型アンデッドはすぐそこにまで迫ってきている。 そして脚部を破壊されたクミンだったが、その程度で戦闘不能になったわけではない。 【ショットガン】を再度『くしざしローズ』に向け引き金を引く。 「っく、バカバカ撃ってくるわねほんとに!」 『くしざしローズ』の片方の【ほね】と【はらわた】が爆散するが、とっさに背中から生えた触手の一本を足代わりにしてバランスを保つ。 さらに負けじともう一本の【にくむち】をクミンに向けて振るう。 交差する【ショットガン】の無数の銃弾と、【にくむち】。 【あご】、【めだま】、【こぶし】、【うで】……銃弾が『くしざしローズ』の体を穿ちボロボロにしていく。 一方【にくむち】はクミンの胴に突き刺さる。 【はらわた】が破損するが、こんなものは大したダメージではない。 アンデッドにとって内臓など特に重要でもない形を整えるだけの器官に過ぎないのだ。 ニヤリと口元を歪めるクミン。 だが『くしざしローズ』は【よぶんなめ】を見開き、クミンの身体構造や重心を見極め【にくむち】を跳ねあげる。 そう、腹ではなく腕の付け根を狙った攻撃だったのである。 「馬鹿な……この破壊力……!? ぎゃああ!!」 基点から破壊された両腕が宙を舞い、反動で吹き飛ぶクミン。 両足、両腕を破壊されては移動も攻撃も出来ない。 「く……動けん……なんという事だ!!」 勝負は決した。 「ローズおねぇちゃんかっこいー」「すごいー」 「くけけ、肉を切らせて骨を立つってのはアンデットの十八番だよな」 「1人で勝てるなんて思いあがりすぎよ・・・ローズ大丈夫?」 「ローズおねぇちゃん、だいじょぶ?」 「大丈夫だよ、多分ね」 『ぬとぬとバーミン』がキャッキャッと姉を褒め称え、 結構ボロボロだが『くしざしローズ』は軽い調子で答える。実際致命的というほどではない。 『くりいと人形』が倒れ伏したクミンの向こうに目を向けると、 こちらへ向かって来ていたアンデッド達は統率を失いバラバラに逃げだすところだった。 あれらが襲って来ていたならば勝負は違ったかもしれないが、結局意思無き操り人形。 クミンとの勝負は3対1のまま終結した。 「いっぱいおにく落ちてる」「つかえるよー」「ローズおねぇちゃん、だいじょぶ?」 「ぬとにもちょっと分けて。おなかスカスカしてきもちわるい」 「2人ともお疲れ様」 2人は落ちた肉片を拾って傷を補修する。 負傷していない『くりいと人形』が再度荒野に目をやると、ちょうどアニス隊が帰ってくるところだった。 「大丈夫か君たち!! まさかこんな数がこっちに押し寄せてこようとは……」 アニスがこっちに駆けてきた。 他の隊員は散り散りになったアンデッドを倒しているようだ。 「げー、帰って来たか……とりあえず話聞いてもらえる?」 「あっ、帰って来ちゃったか。ちょっと誤解しないで欲しいんだけれど・・・」 「ありゃー」 慌てる3姉妹。 それも当然、クミンが裏切り者だという証明ができなければ、自分達が悪者にされてしまうのだから。 「隊長!! こいつらやはりアンデッドの味方です!!」 「あごも壊したほうがよかったかしらね・・・」 「やると思ったよファック! 口ぐらい潰しときゃよかった!  あー、どーしよ、むしろクミンが裏切り者なんだけど、普通はクミンの方信じるわよねぇ」 「クミンちゃん」「ひどいよぅ」 煽るようにクミンが報告する。 こうなることはわかっていた3姉妹もどうしたものかと思案する。 姉2人は物騒なことを言い、末っ子は悲しそうだ。 「一体なにがあった!? クミン! 報告しろ!!」 「・・・ええーと、おちついて聞いてほしいんだけど。この娘、ネクロマンサーのスパイだったみたいなの」 「私が一人になった瞬間を見計らって……こいつらがアンデッドを呼び出して基地を襲ったんだ!!」 (困ったわね・・・ここで口塞いでもよけい悪印象だし・・・) 『くりいと人形』が話し始めたのを遮るように声を張り上げるクミン。 「……じゃあなんで基地は無傷なんだよクミン。唯一の防衛戦力のアンタは倒れてるのに」 「グッ……なぜ基地を壊さないだと……そんなこと知るか!!」 「うわーお、そう来たか。  アタシ達はこの基地の『たからもの』の場所だって教えてもらってんだぞ? ネクロマンサーなら真っ先に潰してるだろ」 「ぬとたちはね、クミンちゃんを『こわさなかった』の。  ぬととおそろいぐらい、手も足も出ないぐらいで『止めた』の。  だから、クミンちゃんはこうやっていっぱいおしゃべりするぐらいげんきなの……もし」 「あたまから、おしゃべりできないくらいには、してないの」「だって、そうしちゃうと、アニスちゃんたち泣いちゃうでしょ」 「ぬとはローズおねぇちゃんとくりおねえちゃんが壊されちゃったら泣くの。いっぱい。溶けちゃうくらい」 『くしざしローズ』が論理的に詰め寄り、『ぬとぬとバーミン』が感情的に訴える。 アニスはそれを厳しい顔で聞いていたが、クミンに向き直る。 「……クミン、正直に答えてくれ。アンデッド達の混乱はなんだ? 『大将』を刺されたかのような混乱ぶりだが……どこにもそれらしい死体はない。  そして、今くしざしローズが指摘した様に……私達が来た時、彼女たちは一息ついていた。もし彼女たちが襲撃者なら、基地は今頃……」 「……」 言い逃れできない状況に押し黙るしかないクミン。 答えは決まったようなものだった。 「ああ、扉は壊しちゃったけどそれはごめんなさいね。閉じ込められたものだから・・・」 「ばっかくりいと、今真面目な話してるっぽいんだから後にしろ後に」 「いや、本当にありがとう……まさかクミンが……いや……しかし……」 「アニスちゃん・・・?」 アニスは戸惑ってはいるものの、気落ちしている印象はなかった。 『ぬとぬとバーミン』が気遣わしげに声を呼びかける。 「……わたしは、クミンを信用したかった。だからこそ、今回砦に残させてもらったんだが……みんな、すまなかった。  私の情でみんなを危険に晒してしまった……どうか許して欲しい。」 (薄々感づいてたわけか・・・) 3姉妹だけでなく、いつのまにか周囲のアンデッドを掃討して戻って来ていた部隊のドールにも向かって謝罪するアニス。 「ま、結果的に大した被害は無かったんだから別にいーわよ」 「文句はあるけど気持ちはわかるわ。情無くしては『生きて』いけない」 軽い調子で言う『くしざしローズ』に、クミンを見詰めながら『くりいと人形』も言葉を続ける。 アンデッドとドール。その違いは心があるか否か、というそれだけの違いでしかないのだ。 情を失えば彼女達もまた、荒野を彷徨う亡者と同じになるだろう。 「クミンを連れて行け……止めをさすことはとてもできない。あしくらいは直してやるんだ」 「……? なんのつもりだ?」 「ほら、クミン、あし、見てあげる」 もはやこれまでかと、追い詰められた野生動物のように強がっていたクミンは、アニスの判断に戸惑う。 そんな彼女にフィンネルが駆けより、クミンの脚部を修復する。 「クミンちゃんのことどうするの」 「…………」 (私たちの関わることじゃないわね) 心配そうに『ぬとぬとバーミン』が尋ねる。 姉2人はアニスの判断に口を挟む気はないようだ。 「君たちと……そして私達次第だ。君たちは、アニスの被害者だからな。  もし私に任せてくれるというのならば、戦闘能力を奪った上で説得してみるつもりだ。」 「・・・私たち自然に、その子の手足だけ狙ってたわ。誰が言うまでもなくね。  もちろん完全に殺しちゃったら面倒なことになるっていうのもあるけど、それだけじゃない」 「……処刑しといた方が色々楽だとは思うけど、アタシが口出しすることじゃあないわよ。トップのアンタが決めるのが一番でしょ」 「ぬともいいー口出ししない」「おはなし、基地のみんなでしてよぅ」 「ま、2人もこう言ってるし。あなた達の好きにしてちょうだい」 結局、3姉妹ともアニスの提案を肯定する形になった。 「ありがとう……ではそうさせてもらうよ」 クミンは隊員たちに両脇を抱えられ、どこかへと連れていかれた。 連れて行かれるクミンの後ろ姿を見ながらアニスがぽつりぽつりと話しだす。 「初めてではないのでね……前に、仲間が一人アンデッドに食べられた事があった。その時も一人、私達に襲いかかってきた仲間が居た。  あの時、彼女は何かに怯え、会話もできない状態だったが……話しているうちに正気を取り戻したらしい。」 そしてチラッとフィンネルを見る。 彼女はうなだれ、顔を伏せていた。もし流すことができたのならば……涙を流していたのだろうか? 「そうね、悪いのはネクロマンサーだもの。どこからどこまでが自分の意思なのか・・・」 (昔も私には仲間がいたのかしら。今は・・・2人がいる。姉妹を置いたのはネクロマンサーだけど、この気持ちは操作されたものじゃないわ。きっと・・・) 「じぶんのいし・・・」(昔は、もっと・・・・・・・えぇとなんだっけ?わすれちゃった!) 『くりいと人形』はその光景を見て、どこか懐かしいような気持ちになった。 自分にも、昔このような仲間が居たかもしれない。 『ぬとぬとバーミン』も何かを思い出そうとするが、彼女の記憶は泡沫の夢のようにすり抜けていった。 「さて、話が長くなって済まないな……今回の作戦だが、残念ながらネクロマンサーは既に逃げ去った後みたいだ。」 「ええ、クミンもそう言ってたわね」 「らしいね。クミンが作戦の内訳をベラベラ喋ってたよ」 「さくせん・・・ってなんだっけぇ」 「こちらは残念だったが……君たちの協力はさせてもらうと約束しよう。  とりあえずアンデッドを生み出していた施設は破壊できたからな。しばらく、ここは平和になるはずだ。」 「アニスちゃんすごいね!」 「お、そりゃめでたいわね」 「本拠地って言ってたから重要施設だったのは間違いないでしょうね」 そしてアニスは言葉を区切り、3姉妹に向かって手を差し伸べるようにしながら言った。 「もし君たちがネクロマンサーへの復讐を忘れ、安息の地を探すというのなら……いつでも歓迎しよう。  私達はもう姉妹なのだから。」 「……だってさ。アニスはこう言ってるけど、どうする?」 「姉妹だって!」 (復讐か。そもそも恨むほど構ってもらってないのよね。目覚めさせられてから放置されてるし) ちらっと姉妹を見る『くりいと人形』。 「おねえちゃんがいっぱいできたよ」「おうちもできたよ!」 「と言っても、うちのネクロマンシーは何考えてるかわからないし、そっちのも逃げのびてはいるみたいだし・・・」 「……ま、もーちょっと世界を見てからでも遅くないんじゃない? アタシ達の敵がこっちに来ても困るしね」 丸い目をキラキラさせながらはしゃぐ『ぬとぬとバーミン』。 相変わらず煮え切らない『くりいと人形』に、『くしざしローズ』が別案を出す。 「そうね、皆でシャワーでも浴びてすっきりしてから考えましょうか・・・」 そうしてこれからのことを話し合いながら、皆で基地に向かって歩いていく。 ――三人は、これからどうするのだろうか? それは、彼女達が考えて、考えて決める事だろう。 なにせ世界は永く永く続くのだ。既に終わっている世界の、彼女たちの後日談である。                                    ――END 2012年3月27日〜2012年3月30日 NC duvel(一馬) 『くりいと人形』 セピア 『くしざしローズ』 死魚 『ぬとぬとバーミン』 姫谷 リプレイ書いた人 セピア 2012/06/11 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- NC(duvel):クミン「戦争か……そのようなものだろうな。迷惑をかけたお詫びを兼ねて、我が基地に招待したいのだが」 ぬとぬとバーミン:「ぼち」 NC(duvel):???「隊長!!危険です!!これもネクロマンサーの罠かもしれませんよ!!」 くりいと人形:「ぼち じゃなくて きち よ」 くしざしローズ:「基地だアホ」バーミンの頭に軽くチョップを入れる「というか、基地ィ?そんな大層なもんがあるわけ?」 これは文字ネタなので、ちょっと組みこみにくい。